Insights — ストーリー

代表インタビュー:キミタビは、なぜカンボジアで生まれたのか

セブ島で10年以上、語学学校を経営してきた代表の渡邉が、2023年の年末にカンボジアで見たもの。人口ピラミッドのくびれ、前を向く若者たち、そして「問いを立てる力は現場で育つ」という確信まで。

 文:株式会社IMPACT ASIA

キミタビは、大学生などがカンボジアで英語を使い、現地の大学生とチームを組んで社会課題に取り組む短期の海外プログラムです。2024年の春に始まりました。代表の渡邉に、なぜこのプログラムをつくったのかを聞きました。

語学学校を10年以上やって、見えてきた課題

渡邉はもともと、フィリピン・セブ島で10年以上、語学学校を経営してきました。始まりは、自分自身の体験です。

僕自身も、これから英語をやらないとやばいというお尻に火がついた状態で、藁にもすがるような思いでフィリピンに行ったんですね。1日中英語漬けになる環境が本当に嬉しくて、その結果3ヶ月で英語が喋れるようになった。これをより日本の人に広げたいなっていうのが、最初のきっかけなんです。

フィリピン留学の市場は大きくなりました。けれど、2017年、2018年ごろから、渡邉は別の変化に気づきます。

自分の意思じゃなくて、学校から言われてきました、親から言われてきました、会社から言われてきましたという人が、すごい増えちゃったんですね。どれだけいい環境を整えていても、なかなか英語は身につかない。そもそも英語を学ぶ前提ができていない。

授業に出ない学生。受け身のまま話を聞く学生。どうしたらいいのかと真剣に悩む先生たち。「どれだけいい先生といい環境をそろえても、内側からの動機が無ければ難しい」。この課題を抱えたまま、渡邉は東南アジアの国々を回り、新しいことができないかを探していました。

プノンペンで、言葉を失った2日目

2023年の年末、渡邉はカンボジアの首都プノンペンを訪れます。

正直、初日は何もない国だなって思っちゃったところがあって。前日までタイの大都市にいたのもあって、首都でこんなもんかって。ここには何もないんだろうなって、初日は思ったんです。

2日目、トゥール・スレン虐殺博物館を訪ねます。1970年代のポル・ポト政権の時代に、収容所として使われた元の学校の建物です。

教科書でポル・ポトの話は聞いていたけど、あれほど生々しく自国民同士が殺し合ったという事例、しかもアジアで。自分が知っていたよりも、すごくショッキングでした。

そのあと、渡邉はカンボジアの人口ピラミッドを見ます。

見事に、特定の年代の人たちがいない。腰のくびれのように、今でいうと40代、50代の人たちがほぼいない。見たことのないような人口ピラミッドを見た瞬間に、この国の惨劇はまだ終わっていないんだっていうことを感じてしまったんですね。

外から見るカンボジアと、中のカンボジアは違った

けれど、街に出ると、別の顔がありました。

これだけ凄まじい歴史がある中で、今のプノンペンは若い人たちが非常に活躍する新しい時代に入っていて、町中で結構英語も通じる。歴史の爪痕みたいな部分と、一方ですごい勢いも感じる。

大学を回ると、優秀な学生が多く、過去の話よりも自分の未来の話にハングリーに向き合っていました。

勝手に僕らは、この国は悲しい国だ、貧困にあえいでいる国だと思っていたけど、実際に会った人たちはもう前を向いている。報道で見ている、外から見ているカンボジアと、実際の中のカンボジアは、こんなにも違うのか。

問いを立てる力は、現場で育つ

ここで、渡邉の中で2つのことがつながります。

ひとつは、問いを立てる力です。

なんでこうなっているんだろう? なんでこういうことが起こったんだろう? なんでこの問題は解決しないんだろう? そういう問いを立てるという意味では、ものすごく深い体験によって、問いを立てる力が育まれる。最高の場所になるんじゃないかと思ったのが一つ。

もうひとつは、英語の位置づけです。

深い課題に取り組む中で、英語自体が目的ではない。課題に没入して取り組んでいく中で、伝えるための道具としての英語。そういう立ち位置でプログラムを作ったら、非常に面白いんじゃないかと。

語学学校で見てきた「外からの動機では英語は身につかない」という課題への答えが、ここにありました。学生が自分から「どうにかしたい」と思える現場があれば、英語は自分から使うものに変わります。

「スイッチが入る瞬間」を、何度も見てきた

キミタビでは、学生がプノンペン郊外のアンドン地区を訪ね、子どもたちが夢を持てるようにするには何ができるかをテーマに、企画をつくります。

子どもたち一人ひとりと接することで、何とかしてこの子たちの未来を作ってあげたいと思う瞬間に、スイッチが変わるんですね。それまでカンボジア人の大学生と話すのも、文法がわからない、単語が見つからない、恥ずかしさが先に立つ。でもスイッチが入った後は、どうやったらこの問題を解決できるんだろうかという方が主になっていく。伝えたい気持ちが圧倒的に勝った瞬間に、英語の恥ずかしさの壁をぶち壊していく。

スイッチが入るのは、学生どうしの話し合いの中だといいます。

最初はお互い知らない人同士なので、なんとなく遠慮し合ってディスカッションしている。でも目の前のリアルを見たとき、飾った言葉ではなく、自分自身が何ができるのかを本気で全員が考え出すと、喧々諤々の議論が起こる。そこにカンボジア人の学生が入ると、それが英語で行われている。昼間のプログラムだけじゃなく、夜中まで議論が続いているのを見たときに、本当にスイッチが入ったんだな、社会課題に取り組める土台ができたんだなと思うんです。

これから

キミタビは2024年の春にカンボジアで始まり、2026年にはベトナムとタイにも広がりました。渡邉がいちばん伝えたいのは、プログラムの形よりも、その真ん中にあるものです。

問いを立てる力は、教室ではなく現場で育つ。 AI が答えを出す時代に、人に会い、話を聞き、「なぜ」を自分の言葉で考えられる場所を、これからもつくっていきます。

教育機関の方へ、プログラムの設計は「海外研修を『学習のサイクル』として設計する」に、導入の形は「導入事例」にまとめています。取材のご相談は報道関係の方へからどうぞ。

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